« 虹色のトロツキー | トップページ | 「 風立ちぬ 」 原作本 »

2016年9月22日 (木)

 「怒り」 小説と映画

* ネタバレ注意! この記事では公開中の映画「怒り」の内容や結末に触れています。
   映画を鑑賞予定の方はご注意ください。

先週、13日に吉田修一の小説「怒り」の上下巻(中公文庫)、合わせて2冊を買った。

9月17日の映画公開直前で通常の装丁の上に、映画仕様のカバーがかぶせてある。
ブックファーストでは、「怒り」1冊購入につき1枚、映画出演者の「栞」をプレゼントという企画でした。 主要キャスト、渡辺謙、森山未来、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡の7枚から、2冊分で2枚選べると。
「期間限定だったら、上下同時購入で7枚くれたっていいじゃん」と言いそうになったが、そこはのみこんで「では、『宮崎あおい』と『広瀬すず』のをください」。

2016091802


5日ほどで一気に読み切った。映画を観る前だが読みながら出演者それぞれが脳内で動きだし、映像が再生される感じだ。 その時点で、このキャスティングはほぼ完璧だと。

                           ・

物語 : ある夏の日、八王子で若い夫婦が惨殺され、現場には「怒」という血文字が残されていた。犯人は顔を整形して逃亡を続ける。 そして事件から一年後、千葉と東京、沖縄の離島に素性と過去の知れない3人の男が現れた。

                           ・

たぶん原作者の吉田修一はこの小説の発想の元になったのは、千葉で起こった英国人の英語教師の殺害、逃亡のあの「市橋達也事件」じゃないだろうか。 犯人が顔を整形して逃亡していること、それから沖縄の離島に身を潜めていたこと。 そう思って読んでいたら、映画のパンフレットの談話で吉田さん本人がそれを明かしていました。 それで「やっぱ犯人は沖縄の離島かなあ」と上巻読んでるときから思ってたんだけど。

                           ・

千葉と東京と沖縄、それから事件を追う2人の刑事。 彼らの物語がだいたい15ページくらいの短い章ごとに交互に進んでいく。 この構成の読みやすさもあって、電車の移動時間のほぼすべてを使って読んだ。ぐいぐい読ませます。面白い。

                           ・

3つの土地で展開される物語にはそれぞれ関連もない。犯人は下巻で明らかになるが(予想どおりだった)、最初の「八王子夫婦殺害」の行動の動機がよくわかんないままだ。
いや、そもそも衝撃的は血文字の「怒」の意味がわからん。 、、て、私が人並み外れてバカなだけでしょうか?

この作品の胆(キモ)は実は「犯人捜し」だけではなくて、その3人の男と出逢った、人達の猜疑心。 信と不信。 そして愛する人を信じきれなかった、裏切ってしまった自分自身への「怒り」。 それから信じていた人に裏切られた、殺すほどの「怒り」。。
、、、う~んでも犯人については、「怒」は映像が浮かぶほどのインパクトなだけに消化不良だわ。

                           
2016091801


で、映画。 NHKの大河ドラマと朝ドラの主役経験者をずらりと並べたような、贅沢なキャスト。 ギャラの総額どのくらいなんでしょうね。どうでもいいけど。

千葉編の元風俗嬢の「愛子」役の宮崎あおいは、原作の「愛子」が「ぽっちゃり」のせいか役作りで7キロ(!)増量したそうだ、、ってそれでも細いだろ、と。 いや増量とかルックスが原作と違うとかよりも、この役は宮崎あおいしかないわ。見事でした。 原作のこの場面、「女の泣き声は尋常ではなかった。人間がここまで泣けるのかと思えるほど凄まじいものだった」。 千葉編の謎の男、松山ケンイチ演じる「田代」。作品のなかでは「田代」は偽名だが、僕は同姓なのでこいつが犯人でなければいいのに、と思ってたのでほっとした。

愛子「田代くんといっしょに暮らしたいの」、、、妄想するバカな俺を叱ってくれい。

2016092201


ひとことで言うと「充分満足ではないが、心に残る映画」。

原作のすべてを再現できるのは無理としても、何人かの人物が省略されていたり、エピソードのいくつかはカットされていて、やや展開に唐突感は否めない。とくに沖縄編。

それでもこの映画を、最近小説の原作ものの映画でやたら多い「前後編の2本観なきゃなんない」ものにしないで、ギュッと1本にしたのは僕的には高評価です。
ランニングタイムの都合とはいえ、2時間20分ほどにまとめたのは、きっとカットしたシーンもたくさんあったんだろうな、と思ったら、最初に完成させたのは「4時間」だったそうだ。
その「4時間ヴァージョン」が観てみたい。 「怒り 完全版」とかDVD化しないですかね。

原作と違って、ひとつのメインテーマのなかで、次々に3つの場面が切り替わるカットはいい。 「怒り」からのそれぞれ。「悲しみ」「希望」「絶望」「失意」からの「慟哭」。

ラストは沖縄の砂浜での、すべてを知った「泉」(広瀬すず)の絶叫で終わる。

実は原作の小説だとその後にエピローグ的な章があるのだけれど、そこをバッサリ切ってしまうのが、なんというか映画的。 
穏やかな最終章までいれるのは、なんとなく2時間ドラマっぱいラストかなー、とか思いました。

                          ・

ところで、「日本で一番悪い奴ら」といい、「シン・ゴジラ」といい最近僕が観る邦画にはなんだかみんなピエール瀧が出ているな。 「瀧に呼ばれている状態」だ。

ピエール瀧の草野球チームの名前は「ピエール学園」というそうです。 関係ない。。

« 虹色のトロツキー | トップページ | 「 風立ちぬ 」 原作本 »

映画」カテゴリの記事

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/551197/64240753

この記事へのトラックバック一覧です:  「怒り」 小説と映画:

« 虹色のトロツキー | トップページ | 「 風立ちぬ 」 原作本 »

最近のトラックバック

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ