« 2017年5月 | トップページ

2017年8月

2017年8月14日 (月)

エゴン・シーレ水彩画集

「 エゴン・シーレ ドローイング 水彩画作品集 」

これは2003年に初版が出たものですが、今年になって手に入れました。

2017081601
28歳の生涯の天才画家の鉛筆、木炭、水彩などの紙に描かれた作品、そのほぼほぼすべて350点あまりをカラーで収録してある。 すばらしい。

参考図版シーレの油彩画と関連作家のクリムトやオスカー・ココシュカの作品も載ってます。

2017081602

この画集は作品が1年ごとの年代順に収録してあり、詳細な作品データや解説もすべて日本語に翻訳してある。 実にわかりやすい。でも作品図版のページの表記は英語だけで、それが洋書の画集みたいで絵が見やすくてよろしい。
ドローイング、水彩に限っていえばシーレ作品集の決定版といえるだろう。

、、、ただ230×170mmのサイズがもうひとまわり大きくてもよかったかな、とは思いますが。。

帯に書いてある「切り裂くような線」から最後期(といっても27,8歳の若さだが)太く丸みを帯びた線まで。 油彩を描くときと同じように荒々しい筆致をしっかり残した水彩の筆さばき。

和書なので品揃えのいい書店や、ヴィレッジ・ヴァンガードの美術書コーナーで時々みかけます。 シーレファンの方は一度手に取ってみるといいと思います。

 ベルリン・天使の詩




映画 「 ベルリン・天使の詩 」  1987年 ドイツ映画

監督: ヴィム・ヴェンダース  

ベルリン、、白状すると1997年くらいまで、僕はこの都市は東西ドイツの国境線上にあるものだと思ってました。 「ベルリンの壁崩壊」がたしか1989年だから、なんという世間知らずだったのだろう、と思うのだけれど。 実際にはベルリンは当時の東ドイツのど真ん中にある都市で、高い壁にぐるりと囲まれた「西ベルリン」は西ドイツの「飛び地」、、というのもちょっと誤解があり、正確にはアメリカ、イギリス、フランスの占領地。 公式には西ドイツでもなかったのだと。 そんなことを97年にたまたま飛行機で隣に座った日本在住のドイツ人から教わりました。 それまでなんて無知だったんだろう、といまでも思うけれど。。

                           ・

ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」。2006年のデジタルニューマスター版がブックオフで安く出てたんで購入しちゃいました。

2017081503

これは1987年公開映画なので、「ベルリンの壁崩壊」の2年前になる。

2017081504_2

ベルリンの天使は白い衣装の中性的な容姿の若者でも、可愛い幼児でもなく黒いコートを着たおっさんだった。。 ブルーノ・ガンツが演じている。

で、そのベルリンの街を見守る「おっさん天使・ダミエル」はサーカスで空中ブランコを舞う女性マリオンに恋をしてしまう。 マリオンに強く惹かれるダミエルは地上に降り人間になることを決意する。 ダミエルが人間になるまで、西ベルリンに生きる人々をモノクロの映像で映し続ける。 終盤ダミエルが翼を捨て人間になると映像はカラーに変わる。

映画の大部分がモノクロで「思わず息を呑む映像美、詩情溢れるメルヘン、そして哲学的思索が凝縮された」、、、つまり刺激的な映画が好きな人には「退屈」だということです。

                            ・

この映画のクライマックスは最終盤の「謎の長台詞」。 人間になったダミエルとマリオンがバーのカウンターで語りあっている。 横顔の画面からマリオンのカメラ目線ドアップの映像になってあの長~い台詞が始まる。

「、、、新月は決断の時。先の運命がわからなくても、決断する時。決断するの。私達、今がその時よ。私達の決断は、この街の、すべての世界の決断なの。 今、私達ふたりはふたり以上の何か、、、 私達は広場にいる。 無数の人々が広場にいる。私達と同じ願いの人々。すべてが私達次第。 私は決心している。 今しか時はないわ。 、、、、」

一部を紹介しましたこの長い台詞。映画を観ている観客に向かって言ってるようなこれは何なのか、ずっとわかんなかった。
 
昨年、「町山智浩の映画塾」を視聴して、あっと思った。こんな内容だった、と思う。
「、、、途中から、観客席に向かって語りかけているこの長台詞。 これは明らかに『壁を壊しましょう』と言っているんです。扇動している。この映画をどのくらいの東側の人々が観たのか、それはわかりません。でも実際に2年後にベルリンを分断していた壁は崩壊した、みんなで動いたらあっけなく壊せたんです。」

なんか目から鱗、であります。 
それをわかったうえで観かえすと、ラストシーンの「壁」に向かって歩き出す老人の「乗船完了!」の最後のセリフもより深い意味をもったものに聞こえてきます。

 ひなぎく

映画 「 ひなぎく 」  1966年/チェコスロバキア/75分

監督 : ヴェラ・ヒティロヴァー (1929~2014)

2017081502

しばらく前ですが5月6日にTAMA映画フォーラムの特別上映会で観てきました。

いまでは入手困難なカルト雑誌「夜想」の35号「チェコの魔術的芸術」でこの作品の存在は10年くらい前から知っていたのだが、なかなか観る機会がなかった。

2017081501
たまたま新百合ヶ丘のアルテリオ映像館でこのチラシをみかけなかったら未だに観ていないだろうな。

2017070905


ファッション関係の有名人がこぞってこの作品を絶賛して「60年代チェコ・ヌーヴェルヴァーグの傑作」「ガールズ・ムービーの決定版」、、お洒落な女の子映画だと思ってしまいそうだけど、けっこうとんでもない映画でした。
これを観に来た着飾った女の子たちは、わけわかんない展開に茫然としてしまったのではないだろうか。 だって僕がそうだから。

姉妹と偽る「マリエ1」と「マリエ2」の2人のバカ女が男を騙して、嘘泣きしてとんずらしたり、好き勝手でハチャメチャな行動を1時間以上繰り返してるバカ映画だよ。

観ているうちに画面全体をハサミで切り刻んでこま切れになったり、モノクロから唐突にどぎついカラーリングになったり、実験的な効果音とかありとあらゆる映画手法を使うこの映画が50年前のチェコスロバキアで制作されたということに、後から衝撃をうけてしまった。

実際この女性監督は当時の政府に睨まれて、数年間活動停止だった。

とても「ガーリーでカワイイ映画」ではないだろ、と。
爆撃のシーンとかたぶん、皮肉や反体制の隠れた意味があるんだろうから、もう一度みたら僕の印象も変わるかもしれない。
なかなかその機会がないけれども。。




バベルの塔

40年ほど前だが「バビル2世」というテレビアニメがありまして、漫画家・横山光輝の原作で
ストーリーや主人公の顔も今となってはうろ覚えなのだが、なぜか主題歌の歌詞は憶えていて、ていうか今でも口ずさめるほどだ。 アニソンってやっぱりすげえなあ、と思う。
で、悪の帝王「ヨミ」と戦う超能力少年バビル2世の拠点が「バベルの塔」なんであります。

5000年前に地球に不時着した宇宙人「バビル」によって建設され、超高性能コンピューターで管理され、人口砂嵐を起こしてその場所を人類に知られていない「バベルの塔」!
、、、それが僕にとっての「バベルの塔」の最初のイメージだ。

なのでずーっと後になって、ブリューゲルやその他の西洋絵画で「バベルの塔」があるのを知ってほんとうに驚いた。 「バベルの塔は実在していたのか!?」と、、、違うって。

                           ・

そして、「バベルの塔」展! 

2017050501

僕は5月に観に行きました。上野の東京都美術館での展示は7月2日で終わってしまったけど、そのあと7月18日~10月15日まで大阪の国立国際美術館で開催中だ。 その後の巡回はないようなので日本で観るなら大阪がラストチャンスだな。

ブリューゲルの「バベルの塔」。 生涯3点描いた内、現存しているのは2点。今回来日しているのはオランダの「ロッテルダムの塔」。 もうひとつの「ウィーンの塔」よりサイズはちいさいが隅々まで完成度は高いです。

たぶんブリューゲルの油彩作品の実物を観るのは今回が初めてだ。

これはすごい。 絵のサイズは599×746mmと意外と小さいが、塔と風景の巨大なスケール感と恐ろしく緻密な描写。蟻のように蠢く人間たち。 

旧約聖書のとおりなら、神の怒りに触れて壊されてしまうことを暗示するかのような、なんだか不穏な雲がたちこめつつある。

この「バベルの塔」を日本で観られることは、おそらくないだろうから東京展が終わるまえにもう一回くらい観にいけばよかったかな~とか、ちょっと後悔してます。

                           ・

追記: 「バベルの塔」展には「奇想の画家」ヒエロニムス・ボス(ボッスと表記されてる場合もあり)の油彩作品2点「放浪者」と「聖クリストフォロス」が初来日してます。
展覧会ではこの3点だけをじっくり時間をかけて観た。 それだけで充分満足でした。

                           ・

2017081404


展覧会限定グッズ。 「バベルの塔のスノードーム」。
これは何かとお世話なっている詩人の友人にプレゼントした。
彼はスノードームのコレクターだと知っていたので。 僕よりさきに「バベルの塔」に行ってなかったようでホッとした。

                           ・

ブリューゲル研究家として有名な森洋子氏の新刊「ブリューゲルの世界」が出版された。
が、僕の好きな「イカロスの墜落」は未収録。 ご本人の解説によると、この作品はブリューゲルの真作ではないというのが、最新の研究によって判明したそうで、多くの「イカロスファン」を落胆したという、、、 僕もがっかりです。。

« 2017年5月 | トップページ

最近のトラックバック

2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ